大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和48年(ワ)580号 判決 1974年7月09日

原告 長生信用組合

理由

第一  被告大塚、同奥津に対する請求について

一  請求原因第一項の事実は当事者間に争いがないが、請求原因第二項のうち、支払期限は両被告とも、また貸付金額は被告奥津において、争うところであるので、これにつき証拠を検討するに、《証拠》を総合すると、被告高橋が昭和四六年一〇月中旬頃原告に対し、従来の三菱自動車ビル地下の靴小売商店舗を拡張して新規に新田町ビル内の店舗に入居するための保証金、改装資金等として二〇〇〇万円の融資を申し込まれたこと、原告の係員である白井において物的担保として提供される筈の被告奥津の小岩の土地建物を調査した結果、約一〇〇〇万円の担保価値と判断されたこと、被告高橋から更に人的担保として被告大塚と被告奥津とによる保証を申出られ、被告大塚は三菱自動車ビル地下で食堂を経営している知合いであり、被告奥津は従兄弟ということであつたこと、係員白井は被告大塚とは面談出来なかつたので保証承諾書(甲第四号証)を送らせ、被告奥津とは面談して債務額を告知し、保証の意思を確認したこと、そして、被告高橋を経て、いずれも両被告の署名捺印ある信用組合取引約定書(甲第一号証)及び額面二〇〇〇万円の約束手形(甲第二号証の一)を徴したことが認められ、この一連の事実から、優に請求原因第二項の争いある事実を認めることができる。

二  両被告は、錯誤ないし詐欺の主張をしているが、これを認めるに足りる証拠はない。被告大塚本人の供述中には、物的担保の評価額が二〇〇〇万円以上で、自分の保証債務を追求されるおそれはないと考えた旨の供述があるが、必ずしも心証を惹かない。また、単なる保証人であつて、連帯保証人ではないと思つた旨の供述も、甲第四号証の文言が単に「保証人」とあるのに即するものではあるが、他方甲第一号証には「連帯保証人」と記されていることもあつて、必ずしも採用できない。

三  そうすると、原告の再抗弁につき判断するまでもなく、被告の抗弁を採ることができず、従つて、原告の請求はすべて正当とせねばならない。

第二  被告高橋に対する請求について

《証拠》により、原告の請求原因事実をすべて認めることができる。

第三  よつて原告の請求はすべて正当としてこれを認容

(裁判官 倉田卓次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例